グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


くすりの話

第5話 花粉症と薬


2005年1月/磐田市立総合病院 薬剤部
去年の夏は記録的な猛暑でした。その年のスギ花粉の飛散量は前年の夏の気温に影響されるといわれています。今年の花粉量は去年の秋の予測では例年の2倍程度、静岡においては花粉量が少なかった昨シーズンから比べると20倍以上と予想されています。花粉症の方にとってはとても心配な数字です。
現在、日本人の約20%が花粉症だといわれています。中でも多いのがスギ花粉症で、その約8割を占めています。国民病とまで言われ花粉症に伴う経済損失は年間3000億円ほどにもなるとの試算もあります。

なぜ花粉症の人は増えているの?

スギ花粉症は1964年に初めて報告され、今や患者数は増加の一途をたどっています。花粉症は遺伝的な体質、住環境、食生活などの様々な要因が重なって起こりますが、その増加の原因には次のようなことが言われています。
  • 盛んに植林された杉が樹齢30年を超え、花粉を多くつけるようになった。
  • 気密性の高い住居でダニやハウスダストが増加し、アレルギー体質の人が増えてきた。
  • 高タンパクの食事など食生活の変化により、アレルギー反応を高める結果となった。
  • 車の排気ガス中の微粒子が原因となって、アレルギーを起こしやすくなった。
  • 舗装道路により雨とともに土の中にしみ込むはずの花粉が、残り続けるようになった。
  • ストレス社会で自律神経の調節が乱れ、花粉症の症状も出やすくなった。
これらからわかるように、とかくスギ花粉だけが悪者になりがちですが実はわれわれの社会にもいろいろな変化や問題があるようです。

花粉症とはいったいどんな病気なの?

花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が原因となって、くしゃみ・鼻みずなどのアレルギー症状を起こす病気です。日本では約60種類の植物による花粉症が報告されています。
症状としてはくしゃみ・鼻みず・鼻づまりという鼻の3大症状だけでなく、目の症状(かゆみ、なみだ、充血など)を伴う場合が多く、その他にノドのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることがあります。
ほかにも集中力の低下やだるさ、イライラするなど不快な症状ばかりです。これらの症状は花粉の飛散量に比例して悪化する傾向にあります。

体の中でなにが起こっているの?

私たちの体は'花粉'という異物が侵入するとそれを受け入れるかどうかを考えます。排除すると判断した場合、これと反応する「抗体」と呼ばれる物質を作ります。その後再び花粉が体内に入ると、鼻の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と結合します。
その結果、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が分泌され、異物である花粉をできる限り体外に放り出そうとします。そのため、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水で洗い流す、鼻づまりで中に入れないよう防御するなどの症状がでてくるのです。
このようにアレルギー反応はヒトに備わった防御機構ですが、必要以上に強く働き不快な症状を起こしてしまいます。

症状を軽くするための花粉症の治療は?

花粉症の治療では何といっても早めの対策が効果的、花粉の飛び始める2週間くらい前からヒスタミンなどの化学伝達物質の分泌を抑える抗アレルギー薬やヒスタミンに拮抗する抗ヒスタミン薬という薬の服用を始め、シーズン中も継続するとより高い効果が期待できるといわれています。
この治療法は「初期療法」といって花粉症の一般的治療(対症療法)では最も効果的です。初期療法は少量の花粉にさらされて鼻の粘膜が過敏になるのを初期に抑 制するのが目的です。これによって症状の出現を遅らせたり、症状を軽くしたり、いっしょに使う薬の量や使用回数を少なくできます 。しかし治ったと思いこんで勝手に服用をやめないでシーズン中は飲みつづけることが大切です。
症状が強くなってしまった時にはステロイドの点鼻薬の併用や、ステロイド薬の一時的(1~2週間以内)な服用が必要となります。
くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状を抑えるには、これらを引き起こす原因となるヒスタミンに拮抗する抗ヒスタミン薬を服用します。この種類の薬は副作用として眠気が起こることもあるので運転などは控えてください。
これらの飲み薬以外にも鼻や目の症状にあわせて抗アレルギー薬やステロイドの点鼻薬や点眼薬を使います。

花粉の侵入を防ぐ

花粉を寄せ付けないために次のような工夫や注意が大切です。
  • 飛散の多い時間帯の外出はなるべく控え、屋外でのスポーツにも注意が必要です。
  • 体に付いた花粉はうがいや洗眼、洗顔などで洗い流しましょう。
  • 外に干した洗濯物や布団は花粉をよく落としましょう。できれば室内に干しましょう。
  • 外出は帽子・メガネ・マスクを身につけて、服もツルツルした素材を選びましょう。
  • 花粉は玄関先で払い、なるべく室内に持ち込まないようにしましょう。

普段からの心がけが大切

アレルギー性の病気は自律神経のバランスがよくないときに症状が悪化するため、日頃からの心身の鍛練も重要な花粉症対策のひとつとなります。
少しの刺激で体が過敏に反応しないように乾布摩擦・冷水摩擦などで皮膚を鍛えることが効果的です。また、十分な睡眠やストレス解消も大切です。栄養のバ ランスを考えた食生活を送ると共に、喫煙や香辛料、飲酒を控えるといった心がけも必要です。たばこの煙は本人だけでなく、周りの人の鼻粘膜も直接刺激し、 花粉症を悪化させる原因になりますので要注意です。花粉症対策には適切な治療と同時に普段からの心がけが大切です。

参考資料

協和発酵、三共、武田薬品工業ホームページ 住友製薬資料
  1. ホーム
  2.  >  くすりの話
  3.  >  第5話 花粉症と薬