第13話 がんの強い痛みに使う痛み止め
2007年1月/磐田市立総合病院 薬剤部
今回は、がんの強い痛みに使う痛み止めについてお話します。
1986年にWHO(世界保健機関)が世界でがんの痛みで苦しんでいる人をその痛みから解放しようと治療方法(WHO方式がん疼痛治療法)を提唱しました。これにより痛みの強さに応じてお薬を使い分け、ほとんどの痛みを取り除くことができるようになりました。 しかし、これらの痛み止めの代表であるモルヒネの人口あたりの消費量を見ますと日本では欧米の諸外国に比べ数分の1以下と格段に低くなっています。これにはモルヒネに対する誤解や偏見があるとも言われています。そのためには医師を始めとして医療側も患者さんやその家族も薬の作用や性質を正しく理解して使うことが大切です。
モルヒネに対する誤解や偏見には次のようなことがあげられます。
今回は、がんの強い痛みに使う痛み止めについてお話します。
1986年にWHO(世界保健機関)が世界でがんの痛みで苦しんでいる人をその痛みから解放しようと治療方法(WHO方式がん疼痛治療法)を提唱しました。これにより痛みの強さに応じてお薬を使い分け、ほとんどの痛みを取り除くことができるようになりました。 しかし、これらの痛み止めの代表であるモルヒネの人口あたりの消費量を見ますと日本では欧米の諸外国に比べ数分の1以下と格段に低くなっています。これにはモルヒネに対する誤解や偏見があるとも言われています。そのためには医師を始めとして医療側も患者さんやその家族も薬の作用や性質を正しく理解して使うことが大切です。
モルヒネに対する誤解や偏見には次のようなことがあげられます。
モルヒネに対する誤解や偏見
モルヒネ中毒になる?
“痛みのある患者さん”に、その治療を目的として正しく使用すれば中毒を起こすことはありません。
このことは科学的にも証明されています。
このことは科学的にも証明されています。
長い間使うと効かなくなる?
モルヒネなどの痛み止めを使っていて量を増やすことはありますが、これは薬が効かなくなったり、癖になったりしたわけではありません。痛みが強くなりそれに合わせて量を増やしたわけです。
効きめの強い痛み止めを早くから使うと使う薬がなくなる?
痛みが続くと心身ともに疲れてしまいます。モルヒネなどの痛み止めを使えば元気に生活していくことができます。これらの薬は個人差がある効き具合やその患者さんの痛みの程度に合わせて、痛みがなくなるまで量を増やすことができます。
3つの目標
痛み治療では最初から体を動かしても痛くない状態にすることは難しいのでの次のような3つの目標を設定して治療していきます。
- 第1に夜間ゆっくり眠れ、痛みで目が覚めないようにすることを目標にします。
- 第2に静かにしていれば痛くなく、笑うことができ、くしゃみや咳をしてもあまり痛くないようにすることを目標にします。
- 第3に歩くなどして体を動かしても痛くなく、普通に近い生活ができるようにすることを目標にします。
基本の5項目
最初に述べたWHOが推奨するがんの痛みの治療法がありますが、その治療法は痛み止めの薬を適切に使うことです。使い方は次の5つの点に要約することができます。
1. 飲み薬が基本となります
飲み薬は人の手を借りずに自分自身で内服できるため患者さんにとって生活の自立が図れます。しかし、薬を飲むことができないときには坐薬や貼り薬を用います。
2. 決められた時刻に飲んだり使用したりします
痛みが消えている状態を維持するため、時刻を決めて規則正しく内服したり坐薬を使用したりします。痛くなってから飲んだり、使ったりするのはやめてください。ただし、とんぷくで飲むように指示された薬は別です。
3. 痛みの強さに合わせて薬の種類を選びます
痛みの強さに応じて階段を上がるように薬の種類をステップアップしていきます。この場合も医師の指示に従っていただければ中毒になることはありません。
4. 患者さんごとに薬の量を調整します
これらの薬の適切な投与量とは治療対象となった痛みが消える量であり、その量は患者さんごとに異なります。そしてモルヒネなどの鎮痛薬では患者さんの痛みが緩和するまで増量でき一般の薬とはことなります。これを専門的には有効限界がないといいます。そのため患者さんが副作用に耐えられる量である限り過量の投与となることがない薬といえます。
5. 患者さんごとに効果、副作用に対する配慮をします
患者さんにとって最良の鎮痛が得られ、副作用が最小となるように治療を進めるには、治療による痛みの変化や副作用の発現に気を付けていくことが大切です。それには医師、看護師、薬剤師によるチーム医療が大切となります。
いろいろな剤形
モルヒネなどの鎮痛薬にはいろいろな種類があります。症状や状態に応じて薬を選んで使用します。その基本は前の項目でも述べたように飲み薬です。これが痛みの治療の主役といえるでしょう。外出や旅行(ただし、海外旅行のときは手続きが必要となります。)にも持っていけます。
また、同じ飲み薬でも規則的に飲む薬以外にも痛みが強くなった時にとんぷくとして飲む剤形もあります。これらの薬はその目的から速く効くタイプのものです。これら以外に薬が飲めないときの剤形として坐薬や貼り薬や点滴などの注射薬を使うこともできます。
また、同じ飲み薬でも規則的に飲む薬以外にも痛みが強くなった時にとんぷくとして飲む剤形もあります。これらの薬はその目的から速く効くタイプのものです。これら以外に薬が飲めないときの剤形として坐薬や貼り薬や点滴などの注射薬を使うこともできます。
副作用について
これらの強い痛みに使う痛み止めには便秘や吐き気の副作用がかなりの割合で出てしまいます。それらの副作用を上手に乗り切る事が痛み除去の成功の鍵になるのです。
副作用の出る割合が高いのは便秘や吐き気の副作用の方が痛みを抑えるより少ない量で現われるためです。そこで予想できる副作用に対しては事前によく理解し、便秘には食事療法や下剤、吐き気には吐き気止めを上手に使ってコントロールすることが重要となります。
副作用の出る割合が高いのは便秘や吐き気の副作用の方が痛みを抑えるより少ない量で現われるためです。そこで予想できる副作用に対しては事前によく理解し、便秘には食事療法や下剤、吐き気には吐き気止めを上手に使ってコントロールすることが重要となります。
重要な注意事項
すべての薬に言えることですが患者さんご本人以外は絶対に服用したり、使用したりしないでください。特にこの種類の薬はがんの強い痛みに使われ、適正に使用をすれば中毒を起こさないことや、使う量の個人差が非常に大きい薬であることなどから注意が必要です。また子供の手の届かないところに保管する注意も重要です。
そして不要になった薬は投薬を受けた病院、薬局に返却してください。
そして不要になった薬は投薬を受けた病院、薬局に返却してください。
参考資料
塩野義製薬パンフレット