第22話 緩和ケアについて1 ~がんの痛み、がまんしていませんか?~
2009年4月/磐田市立総合病院 薬剤部
緩和ケアって?
緩和ケアとは、WHO(世界保健機構)で「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者さんとその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアル(霊的)な問題に関してきちんと評価を行ない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることでクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善するアプローチである」と定義されています。
具体的には…
- 痛みや呼吸困難・痰からみ・腹水などの不快な症状を取り除く
- 患者さんのこころのケアや霊的な(スピリチュアルな)ケアを行う
- 患者さんが目標をもち積極的に生きていけるよう支援する
- 患者さんやご家族に対してカウンセリングなど様々なケアを行う
- 化学療法や放射線療法などの治療と連携をとりながら病気の早い段階から適応される
- 命を大切に思い、死を恐れず自然のものとして受け入れられるようなサポートを行う
- 患者さんを苦しめる合併症や対処法についての調査や研究も同時に行う
- 患者さんが苦しんでいる間も死別した後も、ご家族をサポートする などが挙げられます
【がんそのものの治療】と【がんの痛みの治療】
緩和ケアの中で大きな役割を占めるのが痛みの治療です。がんの60%は治る時代といわれているにもかかわらず、現在でもがんが怖い病気と思われている理由の一つが一日中続く激しい痛みです。しかし、今まで日本では【がんそのものの治療】に比べ、【がんの痛みの治療】はそれほど注目されていませんでした。実際早期のがんでも、【がんそのものの治療】を受けている方の1/3に痛みが出てきますし、がんが進行してくると2/3以上の患者さんに痛みが出現します。その痛みのほとんどが一日中続く持続性の痛みです。昔から「少しくらいの痛みはがまんするものだ」という日本人の思想からか、調査をしてみても半数以上の患者さんが「がんの痛みはがまんするもの」「痛みの治療をするとがんそのものの治療に悪い影響を与えるのでは?」と思われていることがわかりました。
がんの痛みは治療することができます
しかし、がんの痛みはがまんしても治療しなければ強くなってしまい、痛みによって日常生活が妨げられるような実際の行動制限や、イライラしたりやる気を失ってしまったりして気持ちの制限をしてしまいます。またそのような状態では【がんそのものの治療】の進行や効果に影響がでてしまうこともあります。 現在は【がんそのものの治療】が進んでいるように【がんの痛みの治療】も進んでいます。 がんと診断されたそのときから【がんそのものの治療】と並行して必要に応じた【がんの痛みの治療】を行うよう1986年に発表された「WHO方式がん疼痛治療法」が世界中で実践されていて、多くのがん患者さんを激痛から解放することに貢献しています。
「痛み」があるときには遠慮せず主治医や看護師、薬剤師に伝えてください。どんな名医であっても残念ながら「痛み」はその人にしかわからない病気であるため診察してもわかりにくいものです。「痛み」の治療は患者さんのご協力あっての治療です。「痛み」を感じたとおり(痛む時間帯や強さ、ズキズキや重苦しいなどの痛み方など)伝えていただくことで治療がスムーズに進みます。
具体的な治療法 ~WHO方式がん疼痛治療法~
「WHO方式がん疼痛治療法」の基本は、医療用麻薬などの痛み止めの飲み薬を痛みに合った十分な量を使用することです。がんの痛みの治療は3段階になっていて段階的な達成を目指して治療を進めていきます。
医療用麻薬の正しい知識
激しい痛みの治療には効きめが強い医療用麻薬の使用が必要です。日本で【がんの痛みの治療】の普及が遅れているのは、医療用麻薬に対する誤解や偏見があるためでした。「麻薬」と聞くとあまりいいイメージがなく不安に思う方もいらっしゃると思いますが、医師が適切に使用する医療用麻薬は、安全で効果的です。医療用麻薬できちんと痛みを取ることによって、気力・体力が回復し、【がんそのものの治療】にも専念でき見事にがんを克服された方も多くおられます。
アルコールに対して強い人、弱い人がいるように、痛みを治療するための医療用麻薬の十分量にも個人差があります。量が増えること・他の方と比べて薬の量が多いことなどに不安にならなくても大丈夫です。
また、痛みの治療中医療用麻薬の量が増えていくことがあります。これはがんの進行に伴って痛み自体が増強することによるもので薬の効果がなくなっているわけではありません。そのように量が増えたり長期間使用したりすることで中毒を起こしたりすることはありませんし、痛みがなくなり使用する必要がなくなったときには、医師の指導のもと安全に使用をやめることができます。
ただし、痛みのない人(痛みがあっても通常の頭痛や腹痛などの症状)が医療用麻薬を使用すると中毒になることがあります。医師の診断によってその方個人に処方されたお薬ですので絶対に他の人に渡したりしないで下さい。
次の回には実際に【がんの痛みの治療】に使われるお薬や使い方などをお話していきます。
アルコールに対して強い人、弱い人がいるように、痛みを治療するための医療用麻薬の十分量にも個人差があります。量が増えること・他の方と比べて薬の量が多いことなどに不安にならなくても大丈夫です。
また、痛みの治療中医療用麻薬の量が増えていくことがあります。これはがんの進行に伴って痛み自体が増強することによるもので薬の効果がなくなっているわけではありません。そのように量が増えたり長期間使用したりすることで中毒を起こしたりすることはありませんし、痛みがなくなり使用する必要がなくなったときには、医師の指導のもと安全に使用をやめることができます。
ただし、痛みのない人(痛みがあっても通常の頭痛や腹痛などの症状)が医療用麻薬を使用すると中毒になることがあります。医師の診断によってその方個人に処方されたお薬ですので絶対に他の人に渡したりしないで下さい。
次の回には実際に【がんの痛みの治療】に使われるお薬や使い方などをお話していきます。
参考資料
塩野義製薬・武田薬品工業 ホームページ