第26話 妊娠中・授乳中の薬の話
2010年9月/磐田市立総合病院 薬剤部
先天異常について
「薬を飲んでしまったから赤ちゃんに悪い影響が出るかもしれない」と、薬はどうしても悪者になりがちですが、お母さんに何の病気もなく、何も薬を飲んでいなくても100人に3~5人の割合で先天異常は見られます。原因ははっきりと分からないことが多いですが、お薬や放射線が原因の奇形は1%未満だと言われています。
妊娠週数と薬の影響
薬が赤ちゃんに影響を与えるかどうかは、薬の性質と薬を妊娠のどの時期に服用したかによって決まってきます。 妊娠3週末くらいまでは薬の影響をほとんど受けません。それ以降、妊娠4~15週末の中枢神経をはじめ、心臓や手足、目や鼻など主要な器官の形成時期は、催奇形性(赤ちゃんに奇形を起こすこと)、妊娠16週以降の機能的発達の時期は胎児毒性(赤ちゃんの発育を障害したり臓器の機能に影響を与えたりすること)、分娩直前にあっては赤ちゃんの胎外環境への適応障害や薬の離脱障害(薬が急になくなる事により振戦、易刺激性、緊張亢進が現れる事)が問題となります。
妊娠周期のめやすと薬の影響
赤ちゃんへの影響だけでなく、母体への影響を注意しなければならない薬もあります。
たとえば、子宮を収縮させる働きのある薬は流産や早産のおそれがあります。
たとえば、子宮を収縮させる働きのある薬は流産や早産のおそれがあります。
薬を飲んだら授乳は中止?
お母さんが飲んだお薬のいくらかは母乳中に移行するので、赤ちゃんは母乳を通して少量のお薬を飲むことになります。とは言っても、母乳中に移行するお薬の量はきわめて少なく、赤ちゃんに対して有害な影響の出るお薬はほとんどないので、ほとんどの場合は授乳中でも服用できます。
断乳が絶対に必要となるのは、母乳にたくさん移行する薬で、しかも重い副作用を起こすおそれのある薬です。たとえば、一部の抗がん剤や免疫抑制薬、放射性医薬品などがあげられます。
母乳は各栄養素の質とバランスがよい、消化と吸収がよい、感染防御物質が含まれる、親子の愛着形成を促進するなど母乳栄養には多くのメリットがあります。乳児への薬の影響を最小限にした上で、できるだけ母乳栄養を継続することが望まれます。
断乳が絶対に必要となるのは、母乳にたくさん移行する薬で、しかも重い副作用を起こすおそれのある薬です。たとえば、一部の抗がん剤や免疫抑制薬、放射性医薬品などがあげられます。
母乳は各栄養素の質とバランスがよい、消化と吸収がよい、感染防御物質が含まれる、親子の愛着形成を促進するなど母乳栄養には多くのメリットがあります。乳児への薬の影響を最小限にした上で、できるだけ母乳栄養を継続することが望まれます。
薬を飲むタイミング
お母さんの血液中の薬の濃度が高いと、当然母乳にも薬が多く分泌されてしまいます。「授乳直後または赤ちゃんが長い睡眠に入る直前に薬を飲む」といったように、お母さんの血液中の薬の濃度が低いときに授乳するといいでしょう。お薬によっては決められた時間にのまなくてはいけない場合もあります。お薬を処方した医師と相談しましょう。
薬を飲みながら授乳を続けるときは
授乳を続けてよい場合でも、念のため赤ちゃんの様子をよく観察しましょう。母乳の飲み具合、眠り方、機嫌、便の状態などに注意してください。もし、普段と違う様子が見られた時には、早めに医師に相談するようにしてください。
お母さん自身が健康でいることも大切です
赤ちゃんへの影響が心配だからと必要な薬を自分の判断で飲まずにいてお母さん自身の体調が悪くなってしまったら、お腹の中の赤ちゃんにとってストレスとなったり、順調な育児ができなくなってしまったりするかもしれません。薬について正しく理解し、正しく使用していただき、安心して出産や育児に望めるよう私たち薬剤師がお手伝いさせていただきます。常備薬や常用薬がある方は、妊娠・出産前からあらかじめ妊娠中・授乳中に服用できる薬なのか医師や薬剤師に確認しておくといいでしょう。
妊娠中・授乳中のお薬に関する注意点
- 医師の診察を受け、「お母さんの治療に必要な薬」だけを処方してもらいましょう
- 医師や薬剤師に現在、妊娠何週であるか、または授乳中であることを伝えましょう
- 「念のため」「とりあえず」という程度の必要性であれば、処方してもらわないほうがいいでしょう
- 必要がなければ漠然と使うのはやめましょう
参考資料
- 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂版)
- 妊娠と薬情報センターホームページ
- 妊娠・授乳とくすりQ&A(じほう)
- 母乳とくすり-あなたの疑問解決します-(南山堂)