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くすりの話

第27話 新しい糖尿病薬について


2010年11月/磐田市立総合病院 薬剤部
糖尿病の薬物治療には、さまざまな作用機序を持つ薬剤が使用されています。中でも「インスリン注射剤」は誰もが知っている最も代表的な薬剤といえます。しかしながら、最近になって糖尿病治療薬に新たな薬剤が加わってきました。2009年12月より、国内では10年ぶりとなる新しい作用機序を持つ2型糖尿病治療の内服薬(飲み薬)が販売されました。また、2010年6月より従来のインスリン製剤とは異なる、新しいタイプの注射剤(ホルモン注射剤)が販売されました。これらの薬剤は、糖尿病の分野での、久しぶりの画期的新薬として注目が集まっています。このように近年、糖尿病治療において新しい治療剤、治療法が出てきており、当院でも新しい薬剤を使用した糖尿病薬物療法が行われています。今回の「薬の話」では新しい糖尿病薬の情報をお伝えします。

血糖は膵臓から分泌されているインスリンというホルモンにより調節されています。インスリンには血糖を下げる働きがあります。糖尿病は膵臓からのインスリンの分泌量が減少したり、インスリンの働きが悪くなることで血糖の上昇を起こし、血糖が正常に保たれない状態です。

1. DPP-4阻害剤

血糖のコントロールに関係する「インクレチン」というホルモンがあります。インクレチンは食事を摂りますと小腸から分泌され、膵臓に働きかけインスリンの分泌を促す働きがあります。また、血糖を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を下げる働きもあります。インクレチンは血糖が低い時にはインスリンの分泌を促しません。インクレチンは血糖の状態に応じてインスリンの分泌をコントロールしています。しかし、インクレチンは血中に多く存在している「DPP-4(ジペプチジルペプチターゼ-4)」という酵素によって、すぐに分解されてしまいます。 インクレチンを分解してしまう酵素(DPP-4)を阻害する薬剤が「DPP-4阻害剤」(商品名:ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナ、エクア)です。結果として、インクレチンの働きが高まり、インスリンの分泌を促進させ血糖を下げます。「DPP-4阻害剤」の利点は血糖が高くなると作用が現れることです。食後に血糖が高くなる時は膵臓よりインスリンを分泌させ血糖を下げますが、空腹時で血糖が下がっている時はあまり作用しません。結果として、従来の糖尿病薬に比べて低血糖を起こしにくい薬剤といえます。ただ、他の糖尿病薬と併用する時には低血糖が起こる可能性が高まりますので注意が必要となります。

インクレチンとインスリン分泌機序(ジャヌビア)

2. ヒトGLP-1アナログ注射液

インクレチンは、小腸上部から分泌されるGIPと小腸下部から分泌されるGLP-1の2種類があります。GLP-1は血糖の状態に応じてインスリン分泌を促進しています。
2型糖尿病患者にGLP-1を投与すると、低血糖を起こしにくい状態で血糖値が下がります。しかしGLP-1は酵素(GPP-4)によってすぐに分解されてしまい作用時間が短く、糖尿病治療剤としては不適とされてきました。
そこで、GLP-1に脂肪酸を加えることにより、作用時間を持続させ、糖尿病治療に使用できる薬剤が開発されました。それが「ヒトGLP-1アナログ注射液」(商品名:ビクトーザ)です。「ヒトGLP-1アナログ注射液」は、従来のインスリン注射剤と同じくキッド製剤となっており、使用方法もインスリン注射剤と同様の方法で使用していただけます。 「ヒトGLP-1アナログ注射液」の利点は血糖が高くなると作用が現れることです。食後に血糖値が高くなる時は膵臓よりインスリンを分泌させ血糖値を下げますが、空腹時で血糖値が下がっている時はあまり作用しません。結果として、従来のインスリン製剤に比べて低血糖を起こしにくい薬剤といえます。ただ、他の糖尿病薬と併用する時には低血糖が起こる可能性が高まりますので注意が必要となります。

消化管ホルモンであるインクレチンのインスリン分泌への影響

薬物療法を受けられている患者さんへ

インクレチンに関連した薬剤が販売され、薬物療法の選択肢が広がりました。しかし、糖尿病の治療法は食事療法と運動療法が基本となります。いかなる薬剤を使用しても、食事療法と運動療法が守られていないと薬剤の効果はあまり期待できません。基本療法をしっかり行うことで薬物療法の効果は高まります。
日々の血糖値を適切に保つことは、糖尿病に関連するさまざまな合併症の予防につながります。患者さん自らが糖尿病と向かい合い治療に前向きになり、症状の改善ができるよう当院スタッフ一同ご協力いたします。

参考資料・参考資料監修者

参考資料:MSD(株)ホームページ / ノボノルディスクファーマ(株)ホームページ
参考資料監修者:秋田大学医学系研究科・内科学教授・山田雄一郎先生
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