下肢静脈瘤の新しい治療について
下肢静脈瘤ってどんな病気?
下肢表在静脈の弁不全・異常による逆流現象の病態です。主な症状はだるさ、かゆみ、浮腫、痛み、こむら返りで、放置すると皮膚炎(色素沈着)や皮膚脂肪硬化、皮膚潰瘍といった日常生活に支障を来す状態となります。
下肢静脈瘤の診断
基本的に臨床症状と視診・触診、超音波検査で診断します。危険因子としては、肥満や遺伝的要因、女性や妊娠/出産、高齢、長時間の立位(立ち仕事など)があります。本邦においては、45歳以上で女性は24.4%(4人に1人の割合)、男性では12.4%と言われています。
これまでの下肢静脈瘤の治療
治療は大きく分けて、保存的治療と手術治療があります。保存的治療とは弾性ストッキング着用のことで、拡張した静脈を圧迫することで上記の臨床的症状を軽減する治療法です。一方、手術治療では従来の静脈抜去手術(ストリッピング手術)と血管内焼灼術が行われております。静脈抜去手術は、逆流・不全となった静脈を手術で抜去するというもので、血管内焼灼術はいわゆるカテーテル治療で逆流・不全となった静脈内を焼灼することで血栓化させる治療です。血管内焼灼術では創が少ないのが特徴的です。血管内焼灼術では、周囲臓器(皮膚など)に熱損傷を起こす危険性があります。そのため焼灼する静脈周囲に液体(麻酔薬+生理食塩液)を注射します。これにより、安全に血管内焼灼が行うことが可能となります。
新しい下肢静脈瘤の治療
新しい治療(接着剤)
新しい血管内治療として上記のカテーテル治療と基本的には同じですが、熱を使用しない、そのため静脈周囲に注射の必要性がない治療が登場しました。不全となった静脈内に生体用の接着剤(シアノアクリレート)を注入して圧迫することで静脈を閉塞させる治療となります。注射が不要となることで、術後の皮下血腫を減少させ、痛みを軽減できる可能性が高くなります。