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診療科

症例



1. 抜歯

乳歯、歯周炎で動揺のある歯牙から顎骨内に埋伏している歯まですべてに対応しています。
とくに、埋伏智歯(親不知)の抜歯は口腔外科で行われる処置の中でもっとも多いもののうちの一つです。
親不知は、他の歯牙のようにまっすぐはえてくることはむしろ少なく、多くが前に倒れていたり、横に向かってはえてきたりします。そのため、炎症を起こして痛み、腫れを生じたり、隣の歯に虫歯ができたり、歯並びを悪くしたりします。そのため、早期に抜歯することが必要です。抜歯は、そのまますぐ抜ける場合もありますが、多くは、歯肉を切開し、歯を分割して取り出します。縫合をした場合は1週間後に抜糸をします。当科では火曜日と木曜日の午後に主に予約を取って抜歯を行っています。また、「どうせなら一度にすべての親不知を抜歯したい。」という方には2泊3日ほどの入院下で一括抜歯も行っています。

水平埋伏智歯のX 線写真

歯周囲炎

2. インプラント

今まで歯を失った場合、取り外し式の「入れ歯」もしくは、周囲の歯を削り、橋渡しして歯を作る「ブリッジ」を入れることが喪失歯の治療でした。しかし、取り外しをしなくてはいけないとか周囲の健全歯を削らなければならないとか、固いものが咬めない等の欠点もたくさんありました。そこで登場したのがインプラント治療です。インプラント(人工歯根)を顎骨内に埋入し、その上に歯を作るため、入れ歯のように取り外しをしなくても良く、ブリッジのように周囲の歯を削ることもなく、天然歯とほぼ同様に固いものが咬めます。最近では外観もかなり天然歯に近くできるようになっています。
インプラント治療は以前からありましたが、初期のものは必ずしもいい結果では無く、「インプラントは危険な治療」というイメージを植え付けました。しかし、世界で研究がなされ、製品開発が進み、現在ではかなり予後のよい安定した治療法となりました。
当科においては、現在世界でもっとも予知性が高く信頼できるシステムを採用しています。1本だけ失った歯から1本も歯がない方までインプラント治療の対象となります。ただ、インプラントを植立できるだけの骨が無いとできませんからX線写真による診断が必要です。また、残念ながら現在保険適用がありません。インプラント治療に興味のある方は一度御気軽に御相談ください。

インプラント 植立前

治療完了時のX線写真

治療完了時の口腔内写真

3. 顎顔面外傷・歯の外傷

顔面は常に露出しているため、損傷を受ける機会が多くその種類も多様です。顔面には目、耳、鼻、口等の器官があり、脳にも近く大変複雑です。そのため部位、器官によって診療科の担当が異なります。口腔外科はその中でも顔面、口腔内・口唇の裂傷、歯の脱臼・脱落、歯槽骨(歯を支える骨)や顎骨骨折等を担当します。交通事故による重篤な外傷は通常救急車で搬送されますが、口腔内の裂傷や歯牙脱臼などは本人が外来受診する場合が多いので、受傷したらなるべく早く受診することが大切です。
当院では救急外来が24時間受け付けていますので、早期の処置が可能です。転倒したり、顔面をぶつけて、かみ合わせが悪くなったり、ものが2つに見えたり、口が開かなくなったなどの症状は、顔面骨骨折の可能性がありますので口腔外科受診をお勧めします。骨折は早期の整復固定が顔貌や機能のよりよい回復につながります。整復固定とは、折れた骨片を可久的に元の位置に戻し、断端が動かないように固定することです。
通常は手術により骨折部を露出させ、チタン製のプレートを用いてねじ固定します。他部位の骨折と同様に術後は骨折部位の安静が大切ですが、顔面にギブスを巻くことはできませんから、上下の歯牙を咬み合わせ状態で針金により縛ってしまう顎間固定をします。期間は1~4週間ぐらいです。
また、歯牙脱落についてですが、脱落歯牙は状態がよければ再植可能です。抜け落ちた歯は、土などがついている場合は、水道水で流し洗いした後、牛乳につけるか、牛乳が無ければ飲み込まないように舌下において受診してください。

下顎骨骨折の3D-CT像

整復固定術後のX線写真

歯牙脱臼

4. 良性、悪性腫瘍

口腔という狭い範囲にも、多くはないですが様々な腫瘍ができます。腫瘍は大きく分けて良性腫瘍と悪性腫瘍があります。良性腫瘍は緩慢な増大を示し、周囲組織の破壊を伴わず、転移・再発などを来さない腫瘍であり、悪性腫瘍とは急速な増大、周囲組織の破壊、転移・再発を示し、放っておくと生命を脅かす腫瘍です。良性腫瘍には線維腫、血管腫など体のどこにでもできる腫瘍から、エナメル上皮腫などの歯が原因でできる顎骨特有の腫瘍もあります。悪性腫瘍は、ほとんどが扁平上皮がんといわれるもので、舌や歯肉などにできます。「癌ではあるけど、たかが口の中にできたものだから大したことは無い。」と思ったら大間違いです。放っておくと確実に生命を脅かしますし、手術をするとしても摘出範囲が大きくなり、術後の生活への障害となります。脳腫瘍や、胃がん、大腸がんなどと違い口腔がんは、直接見て確かめることができるため早期発見が容易です。早期がんは予後も良く、治療の侵襲も比較的少なくてすみます。
良性腫瘍の治療は摘出が中心となります。しかし、悪性のものと異なり腫瘍のみを摘出する場合がほとんどです。
一方悪性腫瘍の治療は、その種類、進行度により、放射線療法、化学療法、手術のどれか、もしくは組み合わせによって行います。高度進展例においては耳鼻科、脳外科、形成外科等と共同で治療に当たります。
最近は再建術の進歩により広範な切除が可能となったため、術後の予後もよくなっており、血管吻合による筋肉、皮膚、骨等の移植そしてインプラントと組み合わせることにより、顔面形態、咀嚼、発音機能等をかなり回復できるようになり、術後の社会復帰を可能にしています。
術後のQOLの低下の少ない比較的早期ながんに対しては摘出手術が第一選択となりますが、ある程度の進行がんであった場合には摘出手術と再検を行うか、放射線療法と化学療法の併用により臓器の温存を試みるか選択する必要が出てきます。抗がん剤の点滴投与や内服投与と放射線療法との併用は多くの施設で行われていますが、当科ではがんのすぐ近くの栄養動脈にカテーテルを留置して高濃度の抗がん剤を動脈投与しながら放射線を照射する『超選択的動注化学放射線療法』を1999年から導入しています。この治療は特殊な技術が必要とされるため世界でもまだかなり限定された病院でしか行われていませんが、ステージⅢ、Ⅳの進行がんでも5年生存率が70%以上を期待できる非常に有効な治療法です。
がんの中には口内炎や他の良性腫瘍と似た像を示すものが多くあります。なかなか治らないできものがある場合は早めに受診してください。

良性腫瘍

舌の血管腫

悪性腫瘍

舌がん

歯肉がん

5. 障害者歯科治療

歯科治療は、切削器具や様々の危険な材料、薬物を口腔内で使用するため、治療台の上で動かず、口を開けていただくことが必須となります。しかし、障害がありそれができない場合にも対応します。笑気、静脈内鎮静法などの軽い鎮静を併用する場合から、麻酔科医の共力を得て、全身麻酔下で一括して歯科治療をすることも可能です。

全身麻酔導入中

全身麻酔下における歯科治療

6. 口唇、口蓋裂

我が国においては500人に1人の割合で発生する疾患です。胎生初期における口唇、口蓋の形成障害によっておこる裂隙で、遺伝的要因および環境的要因の相互作用によって生じると考えられていますが、反論もあります。
裂隙により、授乳が困難なため出生後すぐに治療が開始されます。手術までは裂隙をカバーするマウスピースのようなものを装着し、3~6ヵ月位までに口唇の裂隙を閉鎖する口唇形成術を行います。残った口蓋部の手術ですが、1歳半位に裂隙の封鎖と鼻咽腔閉鎖(発声時に息が抜けない様にする)の両方を一度の手術で行うPush-Back法が一般的ですが、上顎骨の劣成長を来すという大きな欠点があり、将来さらに上顎や下顎の骨切り手術が必要になることが多いです。それに対し、当院では、最近注目されているFurlow法を応用した二期的口蓋裂手術を行っています。この方法は12ヵ月時と18ヵ月時の2回手術を行いますが、上顎骨の劣成長を来さず裂隙と鼻咽腔の閉鎖を得ることができます。さらに、口蓋の裂隙が小さい場合には2回目の手術をしなくてもよい場合さえあります。

片側性唇顎裂

両側性完全唇顎口蓋裂

7. 顎関節症

口腔外科を受診する患者さんの中でもっとも多い疾患です。10代からお年寄りまで幅広く罹患します。ちょうど耳の穴の前に顎を動かす顎関節があります。この顎関節の疼痛、関節の雑音(ぱちぱち、じゃりじゃりといった音)開口障害等の症状を示し、非炎症性の疾患を総称して顎関節症といいます。いろいろな原因が考えられ、
  1. 顎を動かす筋肉の痛みによるもの
  2. 打撲などの外傷によるもの
  3. 関節の動きをスムーズにする関節円板の位置異常によるもの
  4. 骨自身が変形してしまっているものに分類されます。
それぞれの原因に応じて治療が異なってきます。
当院では単純X線写真やMRI による診断をもとに、スプリント療法、理学療法、投薬、開口訓練等の保存療法から、顎関節内に内視鏡(関節鏡)を挿入して手術をすることもあります。
顎関節症も放っておくと病状が進行するばかりでなく、治療が困難になることが多く、早期の診断処置が必要になります。

8. 顎変形症

顎変形症とは上あご(上顎骨)または下あご(下顎骨)あるいはその両方の形や大きさ、位置などの異常により、顔の変形(ゆがみ、ねじれ)と、噛み合わせの異常を起こしている状態をいいます。このような状態ですとうまく噛めませんし、言葉がわかりづらいなどのいろいろな障害がでてきます。また顔貌の違和感に悩むことも少なくありません。歯科矯正治療単独で治癒可能なものもありますが、矯正治療と顎矯正手術を組み合わせることで、治療することが可能になっています。また、手術を要する場合も、手術単独ということはほとんどなく、術前・術後には矯正治療が必要です。そのため、矯正歯科医と口腔外科医の協力が必須となる治療です。
顎変形症に対する手術は、上顎骨、下顎骨といった骨全体を手術で前後、上下、左右に移動させ噛み合わせと容貌を正しく整えるものです。手術は全身麻酔下で行い、移動させた骨は体内で為害作用のない材料でできたネジやプレートで固定します。入院期間は手術によっても異なりますが、5~12日ぐらいです。顎変形症の診断がつき、手術を前提とした術前・術後の矯正治療は保険が適用されますし、手術も当然保険が適用されます
従来、顎矯正外科手術の治療計画においては、セファログラムと呼ばれるX線写真を用いた2次元解析が行われてきましたが、今日ではCT データと専用のソフトウェアを用いることで3次元画像 での治療計画の立案が可能となりました。当科においては、顎顔面領域手術シミュレーションソフトウエア ProPlan CMFⓇを導入し、治療の一助として適応しています。ソフトウェア上で術前計画にしたがっての3次元シミュレーションが可能となり、骨片干渉や移動前後の状態の把握ができ、顔面の対称性や安全性、正確性に配慮した手術計画を立てることが可能となっています。

術前画像

3次元シミュレーション画像

9. 唾液腺疾患

唾液腺は口腔内に唾液を分泌する臓器です。耳の前にある耳下腺、下顎の下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺からなる大唾液腺と、口の中に多数存在する小唾液腺からなります。大半の唾液は大唾液腺によって作られます。それほどよくある病気ではありませんが、様々な疾患があります。その中でも比較的多いのが唾石症です。
これは唾液腺腺体内もしくは唾液がでてくる管の中に石ができる病気です。症状としては食事をしようとすると耳の前や顎の下が腫れてきて痛みます。時間がたつと腫れも消退し痛みも消失するという症状を繰り返すのが特徴です。X線写真、CT、MRI、唾液腺造影、シンチグラム等により、石の位置、唾液腺の機能を確認したのち摘出します。外来で簡単に摘出できるものもあれば、入院して全身麻酔下で摘出するものもあります。
当科では唾液腺管内視鏡による唾石の摘出手術を行っております。日本でも限られた病院でしか行っていない専門性の特に高い手術ですが、顎下腺や耳下腺の温存。侵襲の少ない唾石の摘出手術が可能になっております。静岡県内では当科でしか行っておりません。比較的まれですが、唾液腺にも腫瘍もできます。良性腫瘍ものどちらでも当科では治療を行っております。

パノラマX線写真上の唾石

CT写真上の唾石

摘出した唾石

10. 嚢胞性疾患

あまり聞き慣れない言葉ですが、嚢胞(のうほう)とは様々な内容物を含む袋状の病変です。顎口腔領域にはしばしば生じ、比較的多い疾患です。顎骨に発生するものと、軟組織に発生するものがあり、顎骨に生じるものは歯に起因するものがもっとも多いです。虫歯を放置しておくと、やがて歯髄炎になり、歯の神経が死んで根尖性歯周炎になります。この状態になるとほとんど痛みは消失しますが、細菌は確実に歯の根尖で繁殖し、膿の出所が無くその場で袋を作って蓄積されます。これが歯根嚢胞といわれ、もっとも多い嚢胞性疾患です。放っておくと、この嚢胞は増大していき顎骨を吸収していきます。増大は緩慢なのでそれほど急に大きくはなりません。
しかし、大きなものになると顎骨いっぱい嚢胞で占められてしまい、ものを噛むと容易に顎骨骨折を来します。この病気は早く治療すればするほど治療後の治りが早くなります。通常は、嚢胞を摘出し、原因歯の根尖を削除する手術をします。この手術を歯根端切除術と言いますが当科では非常に予後の優れた手術用顕微鏡・ピエゾサージェリー・MTAセメント、コーンビームCTを併用した歯根端切除手術を行っており、ほぼ100パーセントこの手術を行った歯は抜歯をされずにすむことが出来ます。
また、歯根嚢胞の他にも、埋伏歯が原因でできるもの、歯とは全く関係なくできるものもありますが、どれも摘出もしくは開窓が必要となります。軟組織にも嚢胞はしばしばできます。もっとも多いものは粘液嚢胞(貯溜嚢胞)です。唾液腺が傷害され、唾液を口腔内に出すことができなくなって貯留したものです。口唇や頬粘膜に膨らみができ、膨隆・消退を繰り返すようでしたらその可能性が高いです。小さなものは外来で簡単に摘出できます。また、舌の下が腫れる「ガマ腫」といわれるものもそれです。ガマ腫に関しては、開窓療法や舌下腺摘出を行わなくてはならないこともあります。
そのほか皮下にできるものや、首にできる嚢胞もありますがまれです。

下顎骨嚢胞

下口唇粘液嚢胞

11. 神経性疾患

顎顔面領域は、非常に敏感な三叉神経という脳神経が知覚を司っています。また、顔面の表情を作り出す筋肉は顔面神経という脳神経が支配しています。しばしばそれらの神経が障害されてしびれ、痛みを生じたり、顔がゆがんだりします。これらの中で比較的多いのが三叉神経痛と顔面神経麻痺です。三叉神経痛は、日頃は全く無症状で経過し、突然顔面や口腔内に激痛を生じます。激痛は短時間ですが、このような発作を数日に1回~1日数十回生じます。虫歯や歯髄炎等や炎症性疾患とは無関係に痛みを生じ、原因は不明です。
投薬によって著効を示す場合があり、無効な場合は神経節ブロックが有効です。しかし、神経節ブロック は日時の経過とともに効果を消失するため再度ブロックが必要になることがあります。また、脳の血管が 神経を圧迫して同様な症状を呈することもあり、その場合は脳外科的手術が効果的です。また、三叉神経痛に似た症状であっても、疾患が隠れている場合もあります。痛みを感じる位置とは離れているところ が原因である「関連痛」といわれるものもあります。たとえば、右上顎の歯肉に激痛があったが、左下顎の虫歯を治療したら治ってしまったという例もあります。
顔面神経麻痺は、顔のゆがみや顔面筋の片側のみの運動障害を来すため比較的早期に病院を訪れます。その中でも多くがBell 麻痺といわれるものです。原因は不明であり、副腎皮質ホルモンや星状神経節ブロックが有効な場合もあります。そのほか、ウィルス感染や腫瘍などによって顔面神経麻痺を生じることもあります。

12. 炎症性疾患

口腔外科においては多い疾患です。多くが歯に起因する細菌感染で、虫歯、親不知、歯周炎を放置したことにより生じる場合が多くを占めます。症状は、顔面、口腔内の腫脹(しばしば顎の下や首の辺りまで 腫れることもあります。)、局所の疼痛、発熱、開口障害等です。たかが歯一本からでも処置が遅れれば 開胸手術をしなくてはな らなくなることもあります。 特に、糖尿病などの基礎疾患を有している場合は進 行が非常に早いので、初期の治療が大変重要です。
治療は、感染源の除去および抗生剤の投与と安静が中心になります。膿がたまっている場合は切開が必要になります。軽度であれば抗生剤の内服と外来通院のみですが、進行すると、入院下での抗生剤点滴、全身管理が必要となります。

歯牙が原因で生じた膿瘍

膿瘍を切開し排膿している