皮膚科
皮膚科の紹介
皮膚は「内臓の鏡」と言われる人体のうちで最大の臓器であり、細胞の水分維持や外力や外敵から身を守る役割があります。また、皮膚には神経、分泌腺、表皮細胞、膠原線維や弾性線維などのほかに、皮膚を循環する免疫細胞も存在していて、互いに連携して働いています。そして、内臓の不調によって、様々な皮膚の不具合が生じます。寝不足になると化粧ののりが悪くなるのは、女性でしたらよく経験することでしょう。ストレスがかかるとホルモンの分泌が悪くなり、皮膚にしっとり感がなくなるのです。皮膚の異常から、その原因を見つけだし、治すことが、私たちの役割です。皮膚以外にも、爪、毛髪や、口腔内、陰部、肛門周囲など道具を使わないで視診(見ること)が可能な部位の疾患も対象となります。
対象となる皮膚科疾患のいろいろ
- 湿疹・皮膚炎:アトピー性皮膚炎、脂漏性湿疹、貨幣状湿疹、手湿疹、汗疱状湿疹など
- 角化症:尋常性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、掌蹠膿疱症、SAPHO症候群、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、太藤病など
- 自己免疫疾患:円形脱毛症、尋常性白斑、扁平苔癬、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、皮膚筋炎、ベーチェット病、成人スティル病、IgA血管炎、ANCA関連血管炎、RS3PE症候群、再発性多発軟骨炎、壊疽性膿皮症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、遺伝性血管浮腫、IgG4関連皮膚疾患など
- 感染症:足白癬(みずむし)、爪白癬(つめみずむし)、カンジダ症、マラセチア毛包炎、伝染性軟属腫(みずいぼ)、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、尖圭コンジローマ、ウィルス性発疹症、麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか)、手足口病、新型手足口病、リンゴ病、パルボB19ウィルス感染症、水痘(みずぼうそう)、帯状疱疹、単純ヘルペス、カポジ水痘様発疹症、サイトメガロウィルス皮膚感染症、伝染性単核球症、尋常性狼蒼、リンパ節結核、バザン硬結性紅斑、皮膚非結核性抗酸菌症、カポジ肉腫、毛包炎、尋常性ざ瘡(にきび)、伝染性膿痂疹(とびひ)、せつ、よう、丹毒、猩紅熱、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、トキシック・ショック症候群、バルトネラ感染症、猫ひっかき病、ビブリオ・バルニフィカス感染症、ガス壊疽、マダニ刺咬症、クリーピング病など
- アレルギー疾患:じん麻疹、薬疹(播種状紅斑丘疹型、多形紅斑型、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群、扁平苔癬型、アナフィラキシー型など)、接触皮膚炎(かぶれ)、獣肉アレルギー、パンケーキ症候群など
- 皮膚腫瘍(良性・悪性):皮膚線維種、アクロコルドン、色素性母斑、脂漏性角化症、光線性角化症、附属器腫瘍、有棘細胞癌、悪性黒色腫、基底細胞癌、汗腺癌、毛包癌、皮膚悪性リンパ腫、菌状息肉症、リンパ腫様丘疹症、NKリンパ腫(鼻型)、ランゲルハンス組織球症、成人T細胞白血病/リンパ腫、MTX関連リンパ腫など
- 水疱症:水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、ジューリング疱疹状皮膚炎、腫瘍随伴性天疱瘡、IgA水疱症、線状IgA水疱性皮膚症、先天性表皮水疱症、後天性表皮水疱症など
- 物理的障害:擦過傷、ざ傷、熱傷、凍瘡(しもやけ)、凍傷など
取り組み
- 皮膚科開業医の先生たちと緊密な連携により、地域医療に根ざした皮膚科診療に努めています。
- アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症など慢性炎症性皮膚疾患に対する新規治療(生物学的製剤や分子標的薬など)を積極的に取り入れています。
- ナローバンドUVB機器を用い、難治性アトピー性皮膚炎や乾癬、痒みの強い皮疹、類乾癬、皮膚リンパ腫に対する光線療法を実施しています。
- 良性皮膚腫瘍、悪性皮膚腫瘍の臨床診断、病理診断、治療および経過観察をおこなっています。当院形成外科と緊密に連携し、効果の高い皮膚腫瘍の治療を目指しています。
- リンパ浮腫外来を行なっています。がん手術による続発性リンパ浮腫や原発性リンパ浮腫の複合的治療は保健適応となりました。資格を取得した医師と専門の施術者によって計画をたてて、治療を実践しています。
- 稀少性皮膚疾患の診療について、その疾患を専門とする他大学・施設皮膚科との連携をとり、患者さんに有益な情報を与えるように努めています。
- 特殊外来として、浜松医科大学皮膚科の伊藤泰介准教授の脱毛外来を月に1回行っています。
当院皮膚科の特別な取り組み
薬疹研究
当院皮膚科は、国立食品衛生研究所(荒川先生)の統括するAMED薬剤被害研究において、共同研究をおこなっている全国6施設の皮膚科のひとつで、患者さんには臨床研究のご協力をお願いしています。また、厚生労働省難治性疾患研究班にも加えさせていただいており、患者さんに対して最新の情報を提供することが可能です。研究費の許す限り特別な検査(HLA DNA遺伝子検査や薬疹に関連するウィルスPCR検査など)が患者負担なく可能であり、それをもとに的確な診断・治療・予防を実践しています。また、日本皮膚免疫アレルギー学会の協力のもとに、本邦初の薬疹データベースを構築し、全国の皮膚科医に薬疹の情報提供をおこなっています。
獣肉アレルギー予防を目的とした疫学的調
私たちは、本県における獣肉アレルギーの原因の一因がマダニ刺咬症であることをつきとめました(Hashizume et al. Journal of American Academy of Dermatology 2019:橋爪秀夫 日本衛生動物学会雑誌 2019; Kageyama et al. Allergy 2020、橋爪秀夫 医学のあゆみ 2020など)。静岡県に多い茶業農家は、マダニ刺咬者が多いことから、今後本県における疫学調査が必要と考えています。獣肉アレルギーの的確な診断による発症頻度の解析と治療・予防開発のための臨床試験を行っています。
皮膚リンパ腫に対するインターフェロンγ療法
私たちは、比較的高齢の皮膚リンパ腫患者に対して、エトレチナートや光線療法とともに、積極的にインターフェロンγ療法を行ない、本邦でも屈指の治療症例数を誇っています。この経験に基づいて、安全かつ有効な皮膚リンパ腫治療をおこなっています。
詳細情報(当科で行っている治療方法・検査方法について)
ナローバンド-UVB(NB-UVB)療法
太陽光線に含まれる紫外線の中波長と呼ばれる310nm付近の波長は、有害な作用はほとんど無く、高率的に皮膚の炎症や痒みを抑えることがわかっています。当科では2018年よりドイツ製 の光線療法機器(Waldmann UV7002)を備え、アトピー性皮膚炎や尋常性白斑、乾癬などの治療に使用しています。ペースメーカーの入っている患者さんは使用できません。週に1-2回から開始し、高い有効性を得ています。
円形脱毛症の治療
多発したり、拡大傾向が強い円形脱毛症の治療は難しい場合が多いです。ステロイドホルモンの局所注射や内服または注射療法などの通常の治療の他に、当科ではSADBEというかぶれを起こす薬剤を塗布する局所免疫療法と呼ばれる特殊な治療も行なっています。また、最近JAK阻害薬という内服薬が、難治性の円形脱毛症の患者さんに限って保健適用になりました。当科ではこれらの特別な治療を行うことができます。
乾癬およびアトピー性皮膚炎の生物学的製剤療法・分子標的薬療法
最近、創薬の画期的な方法が開発され、病気の原因に関連する物質を除去する抗体製剤が次々と生まれています。乾癬という慢性の皮膚疾患においては、TNF-α、IL-17、IL-23などの物質を除去するような抗体製剤や、分子標的薬であるJAK阻害薬が生まれ、優れた有効性が確認されています。また、アトピー性皮膚炎ではIL-4やIL-31の量が多く、これを除去する抗体製剤があります。これらの新しい薬剤の優れた効果は万人が認めるところですが、非常に高価なので高額医療制度を上手に使う必要があります。当科は日本皮膚科学会の定める生物学的製剤治療の認可施設であり、これらの治療を行うことができます。
接触皮膚炎(かぶれ)を含めた様々なアレルギーの検査
かぶれや金属アレルギーの原因物質を調べるために、原因物質を皮膚に貼付した2日後に赤く腫れ上がるかどうかを判定するパッチテストを行なっています。原因がわからないかぶれも、日本人がかぶれやすい21種類が用意されたキット(JSAパッチテスト)で検査することによって、原因がはっきりすることがあります。
また、果物や食物による蕁麻疹などのアレルギーを調べるためのプリックテストを行なっています。点滴をしながら、調べたいものを少量皮膚内に入れて反応をみる検査です。
また、果物や食物による蕁麻疹などのアレルギーを調べるためのプリックテストを行なっています。点滴をしながら、調べたいものを少量皮膚内に入れて反応をみる検査です。
薬疹の原因薬剤検査
薬疹の原因薬剤を決定することは、二度と同じことを起こさないために重要なことです。現在は、薬剤と患者さんの血液を混ぜて培養して反応をみる検査(DLSTまたはBAT)、薬剤を軟膏にして皮膚に貼付して2日後に反応をみる検査(薬剤パッチテストまたはスクラッチパッチテスト)などが、患者さんに負担をかけない検査として行われます。内服試験は実際の内服量の1/10量から内服していただき、皮疹の出現をみます。重要な薬剤で内服できるかどうかの確認が必要な場合に行い、通常入院が必要です。
重症薬疹の発症を予見するHLA検査
白血球(リンパ球)の血液型のことをHLAタイプといいます。最近、ある種の薬剤(カルバマゼピン、フェニトイン、アロプリノール、アバカビル、レクチゾルなど)では、特有のHLAタイプのヒトに重症薬疹が判明しました。このため、HLAタイプを調べることによって、使用してはいけない薬剤がわかる場合があります。わたしたちは、重症薬疹の患者さんのHLAのDNAタイプを検査(保険未収載)して、今後の発症予防の参考にしていただいています。
診療統計
生検実績
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
皮膚生検数 | 234件 | 259件 | 293件 |
入院症例
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
帯状疱疹・ヘルペスウイルス感染症 | - | 41 | 23 |
細菌感染症 | - | 28 | 44 |
膠原病・血管炎 | - | 9 | 11 |
自己免疫性水疱症 | - | 12 | 9 |
自己炎症性疾患 | - | 6 | 9 |
重症薬疹 | - | 13 | 12 |
蕁麻疹・アナフィラキシー | - | 0 | 7 |
悪性リンパ腫 | - | 8 | 5 |
皮膚悪性腫瘍 | - | 0 | 5 |
その他 | - | 15 | 14 |
合計 | - | 132 | 139 |
患者数
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
延外来患者数 | 10,851名 | 11,449名 | 13,032名 |
延入院患者数 | 1,425名 | 1,386名 | 1,516名 |
スタッフ紹介
石川 優人
職名 | 医師 |
出身校 | 浜松医大 |
取得年 | 平成30年 |
専門領域 | 皮膚科一般 |
資格 | 緩和ケア研修(PEACE)修了 |
畑 明人
職名 | 医師 |
出身校 | 金沢医科大 |
取得年 | 平成30年 |
専門領域 | 皮膚科一般 |
資格 | 緩和ケア研修(PEACE)修了 |
橋爪 秀夫
職名 | 非常勤医師 |
出身校 | 浜松医大 |
取得年 | 昭和61年 |
専門領域 | 皮膚免疫学 アレルギー 薬疹 皮膚リンパ腫 |
資格 | 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 ・指導医 医学博士 日本研究皮膚科学会評議員 日本皮膚科学会代議員 科学研究委員会専門委員 日本皮膚科学会ICD委員 日本皮膚科学会医療安全委員 日本皮膚科学会AI委員 日本皮膚科学会静岡県皮膚科医会理事 日本褥瘡学会中部支部評議員 日本皮膚免疫アレルギー学会評議員 日本皮膚免疫アレルギー学会薬疹専門部会長 日本皮膚免疫アレルギー学会薬疹データベース委員長 日本皮膚免疫アレルギー学会学術委員 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員 静岡県指定難病審査委員(新制度) 浜松市指定難病審査委員(新制度 静岡市指定難病審査委員(新制度) 厚生労働省難治性疾患重症多形滲出性紅斑研究班員 官民共同による重篤副作用バイオマーカー開発研究事業創薬戦略部(医薬品等規制科課)医薬品等規制調和・評価研究事業研究員 浜松医科大学皮膚科学非常勤講師 新リンパ浮腫講習会修了 医療安全管理者研修修了 日本フットケア足病医学会下肢創傷処置・管理のための講習会修了 緩和ケア研修(PEACE)修了 |
伊藤 泰介
職名 | 非常勤医師 |
出身校 | 産業医大 |
取得年 | 平成7年 |
専門領域 | 脱毛症 皮膚アレルギー |
資格 | 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 医学博士 浜松医科大学皮膚科学准教授 日本皮膚科学会代議員 日本研究皮膚科学会評議員 日本皮膚免疫アレルギー学会評議員 毛髪科学研究会世話人 日本美容皮膚科学会雑誌委員、評議員 日本小児皮膚科学会運営委員、雑誌委員 日本皮膚心身医学会評議員 円形脱毛症患者の会顧問医師 日本円形脱毛症コミュニケーション顧問医師 |
認定施設
- 日本皮膚科学会 専門医研修施設
- 日本皮膚科学会 乾癬生物学的製剤治療認定施設