リウマチ詳細情報
関節リウマチとは
リウマチ(rheuma=流れ)の語源はギリシャ語に由来します。「流れる」という意味で、痛みがいろいろな場所に起こるということを表しています。関節リウマチはなぜ発症するのか、その原因はまだ分かっていません。しかし、遺伝的要素(一卵性双生児の場合は発症率34%、二卵性双生児の場合は発症率7%)、環境要素(歯周病、喫煙、ウイルス感染など)、免疫学的要素(本来、ウイルスや細菌から自分を守る細胞が、自分の体の成分を異物とみなし攻撃してしまう)等が複雑的に関係すると考えられています。現在、日本における関節リウマチ患者さんは人口の0.6~1.0%であり、70万人ほどいるとされています。男女比は1:3~4、好発年齢は35歳~55歳と考えられています。関節リウマチでは免疫の異常が主に関節で起こり、こわばり、関節の腫れ、痛みがでます。症状は指や手首、足趾に起こりやすく、症状が続けば関節の破壊(骨や軟骨の破壊)が起こり関節の変形が生じます。また、全身症状として全身の疲れやすさ、微熱、体重減少、貧血などを呈します。関節の破壊は比較的早期に起こることが分かっており、関節リウマチは早期発見と早期治療によって早期から炎症を抑え、その状態を維持することが大切な疾患です。
早期診断・早期治療のために
関節リウマチの関節破壊は比較的早期から起こるため、早期の診断と治療が大切です。私たちは診察室における詳細な問診と診察、血液検査(炎症値、リウマトイド因子、抗CCP抗体、抗核抗体、関節炎マーカー等)、画像検査(レントゲン、関節エコー、MRI、CT等)を駆使して、早期から免疫異常を抑える治療を実践し、全てのリウマチ患者さんが寛解(腫れや痛みが最小限となる状態)となることを目指した治療を行なっています。特に関節エコー検査は簡便、非侵襲であり高頻度に施行して臨床現場に役立てています。当院の臨床検査技師が豊富な経験から熟練した技術で検査に当たります。
患者さんとともに最適な治療を目指して
関節リウマチ治療は薬物療法、手術療法、リハビリテーション、基礎療法の4本柱で成り立ちます。これは、医療者側だけが行うものではなく、患者さんと共に治療目標をはっきりと決めて、その目標(寛解:腫れや痛みが最小限となる状態)に向かってともに治療を進めていくことが大切です。この考え方をtreat to target(T2T:ティートゥーティー)といいます。目標を決めるためには何らかの指標が必要です。指標にはいくつかありますが、DAS(ダス)、SDAI(エスダイ)、CDAI(シーダイ)等を用います。腫れや痛みのある関節数、炎症値、痛みの程度等を診察することでそれらの数値を計算することができます。そのため当科の治療は、診察前にそれらの質問票を患者さんに記入していただき、今後の治療について主治医と共に相談していきます。
関節リウマチの薬物治療
関節リウマチの薬物治療はここ20年で大きく様変わりしました。それまでは十分な効果を持つ薬剤はなく関節変形は必発とされていましたが、治療薬の開発、治療方法の改善により、早期からしっかりした治療が継続的に施されれば関節破壊を防げる時代になりました。特に、生物学的製剤や次世代の内服薬(JAK阻害剤)は劇的な効果をもたらします。関節リウマチの薬はすべての患者さんに同じように効果があるわけでなく、効果に個人差があります。よって、患者さんは症状の変化について医師と相談して、自分にあった薬剤を医師と共に選択していくことが大切です。
関節リウマチの手術治療
早期発見、早期治療により薬物療法が奏功した場合は関節破壊の進行を抑えられますが、一度、関節破壊が起きてしまうと元に戻すのは難しくなります。日常生活にも支障が出るようになれば、痛みをとり、機能を回復させるための手術療法の適応となることがあります。手術方法として、人工関節置換術、関節固定術、腱再建術、関節形成術、滑膜切除術が適応になります。また、薬物療法の効果はみられるにも関わらず、ごく少数の関節もしくは腱の炎症が残存してしまう場合があります。放置するとその部位の関節破壊や腱断裂の可能性がでてきます。そうなる前に薬物療法の補助的な手段として滑膜切除術が適応になることもあります。医師とよく相談しその効果を納得したうえで決断することが大切です。
リウマチ患者の日常生活上の注意
1. 安静と運動
最初にリウマチ患者さんからよく聞かれる質問について検討してみましょう。
リウマチの時は、「休んだほうがよいのでしょうか」、それとも「体を動かしたほうがよいのでしょうか」という問いです。結論から申しますと、安静・運動ともに必要です。
具体的に説明しましょう。安静には「全身の安静」、「局所の安静」、「精神の安静」の3つがあります。
「全身の安静」というのは、体を横にして休むということです。特に急性期、関節の痛み・腫れがひどく、発熱がある場合は、安静が大事です。1日睡眠8時間以上取るように心がけましょう。不眠症という方もいらっしゃるかもしれませんが、眠れなくても体を横にするだけで十分です。昼寝も有効です。しかし、安静のとりすぎは、筋肉の萎縮や関節の拘縮・変形を招く可能性がありますので、注意してください。
「局所の安静」、これは痛んでいる関節などを休めることです。特に炎症の強い関節は安静にするのが原則です。股・膝・足関節は立っているだけで関節の負担になりますので、これらの関節の安静を保つためには、座ったり、体を横にしたりする必要があります。また、装具やサポーターを利用するのも有効です。医師や看護師に相談してみてください。
「精神の安静」というのは、ストレスや不安など、リウマチを悪化させる精神的要因を上手にコントロールするということです。ストレスはリウマチを悪化させますし、仕事面、経済面、家庭的な悩みもリウマチを悪化させる原因となります。主治医やケースワーカーと相談して、上手に精神的問題を解決するように心がけましょう。
「運動」は筋萎縮や関節の拘縮・変形を防ぐために重要です。原則として発熱のある急性期以外は運動を行なうように心がけましょう。特に水中での運動は効果的です。泳ぐ必要はなく、ただ水中歩行をするだけで十分です。水中では浮力の関係で、体重による股・膝・足関節への負担が軽減され、股・膝・足関節の悪い患者でも運動ができます。さらに、水中では陸上と同じ動作をしようとしても、水の抵抗の分だけ負荷がかかることになりますので、同じ時間運動したとしても、陸上で行なう場合と比べ、たくさん運動をしたことになります。ただし、運動のやりすぎは全身や関節の炎症症状を悪化させることになりますので、注意が必要です。 家庭でできる運動方法としては、「関節可動域訓練」と「筋力強化訓練」があります。「関節可動域訓練」とは、関節を最大限に動かす訓練法です。症状のある関節の場合、温めてから運動をするとよいでしょう。1度に5~6回関節をゆっくり動かすようにします。関節を十分に伸ばしたり、曲げたりします。反動はつけないでください。急性期には1日1回、慢性期には1日2~6回行なうのがよいでしょう。特に、手指や足趾の関節可動域訓練(リウマチ体操)は大切です。丁寧にご説明しますので内容を医師もしくは看護師に確認してください。
安静と運動のバランスについてまとめます。安静のとりすぎは、筋肉の萎縮や関節の拘縮・変形を招く可能性があり、運動のやりすぎは全身や関節の炎症症状を悪化させる可能性があります。運動や仕事は2時間以上続けないにしましょう。
リウマチの時は、「休んだほうがよいのでしょうか」、それとも「体を動かしたほうがよいのでしょうか」という問いです。結論から申しますと、安静・運動ともに必要です。
具体的に説明しましょう。安静には「全身の安静」、「局所の安静」、「精神の安静」の3つがあります。
「全身の安静」というのは、体を横にして休むということです。特に急性期、関節の痛み・腫れがひどく、発熱がある場合は、安静が大事です。1日睡眠8時間以上取るように心がけましょう。不眠症という方もいらっしゃるかもしれませんが、眠れなくても体を横にするだけで十分です。昼寝も有効です。しかし、安静のとりすぎは、筋肉の萎縮や関節の拘縮・変形を招く可能性がありますので、注意してください。
「局所の安静」、これは痛んでいる関節などを休めることです。特に炎症の強い関節は安静にするのが原則です。股・膝・足関節は立っているだけで関節の負担になりますので、これらの関節の安静を保つためには、座ったり、体を横にしたりする必要があります。また、装具やサポーターを利用するのも有効です。医師や看護師に相談してみてください。
「精神の安静」というのは、ストレスや不安など、リウマチを悪化させる精神的要因を上手にコントロールするということです。ストレスはリウマチを悪化させますし、仕事面、経済面、家庭的な悩みもリウマチを悪化させる原因となります。主治医やケースワーカーと相談して、上手に精神的問題を解決するように心がけましょう。
「運動」は筋萎縮や関節の拘縮・変形を防ぐために重要です。原則として発熱のある急性期以外は運動を行なうように心がけましょう。特に水中での運動は効果的です。泳ぐ必要はなく、ただ水中歩行をするだけで十分です。水中では浮力の関係で、体重による股・膝・足関節への負担が軽減され、股・膝・足関節の悪い患者でも運動ができます。さらに、水中では陸上と同じ動作をしようとしても、水の抵抗の分だけ負荷がかかることになりますので、同じ時間運動したとしても、陸上で行なう場合と比べ、たくさん運動をしたことになります。ただし、運動のやりすぎは全身や関節の炎症症状を悪化させることになりますので、注意が必要です。 家庭でできる運動方法としては、「関節可動域訓練」と「筋力強化訓練」があります。「関節可動域訓練」とは、関節を最大限に動かす訓練法です。症状のある関節の場合、温めてから運動をするとよいでしょう。1度に5~6回関節をゆっくり動かすようにします。関節を十分に伸ばしたり、曲げたりします。反動はつけないでください。急性期には1日1回、慢性期には1日2~6回行なうのがよいでしょう。特に、手指や足趾の関節可動域訓練(リウマチ体操)は大切です。丁寧にご説明しますので内容を医師もしくは看護師に確認してください。
安静と運動のバランスについてまとめます。安静のとりすぎは、筋肉の萎縮や関節の拘縮・変形を招く可能性があり、運動のやりすぎは全身や関節の炎症症状を悪化させる可能性があります。運動や仕事は2時間以上続けないにしましょう。
2. 関節を守るための工夫
関節を守るためには以下の点に注意しましょう。
姿勢は背筋を自然にまっすぐに伸ばし、首と肩の力を抜き、良い姿勢を保ちましょう。歩行時には、肩の力を抜き、両手を前に垂らし、やや膝を曲げて柔らかく歩くようにしましょう。荷物は手に持たずに、肘や肩から掛けるのが良いでしょう。鍋やコップを持つ際も片手で持つのではなく、両手で支えて持つことが大切です。床に置いた物を持ち上げるときは、腰を曲げて取るのではなく、膝を曲げて取るようにしましょう。
長時間の起立や歩行が必要となる際には、装具やサポーターを使用することも大切です。装具類をご希望の方は医師もしくは看護師に相談してみてください。
トイレにも工夫が必要です。和式便器は膝・股関節によくありませんので、洋式便座を取り付けるようにしましょう。また、立ち上がりに便利なように手すりをつけましょう。寝具に関してはやはりベッドが良いでしょう。
姿勢は背筋を自然にまっすぐに伸ばし、首と肩の力を抜き、良い姿勢を保ちましょう。歩行時には、肩の力を抜き、両手を前に垂らし、やや膝を曲げて柔らかく歩くようにしましょう。荷物は手に持たずに、肘や肩から掛けるのが良いでしょう。鍋やコップを持つ際も片手で持つのではなく、両手で支えて持つことが大切です。床に置いた物を持ち上げるときは、腰を曲げて取るのではなく、膝を曲げて取るようにしましょう。
長時間の起立や歩行が必要となる際には、装具やサポーターを使用することも大切です。装具類をご希望の方は医師もしくは看護師に相談してみてください。
トイレにも工夫が必要です。和式便器は膝・股関節によくありませんので、洋式便座を取り付けるようにしましょう。また、立ち上がりに便利なように手すりをつけましょう。寝具に関してはやはりベッドが良いでしょう。
最後に関節保護6カ条として注意事項をまとめてみました。
- 重いものを指先で持たないようにする
- 長時間同じ姿勢をとらない
- 太っている人は少しでも体重を落とす
- 畳生活をやめて椅子生活にする
- 正座はなるべくしない
- かかとの高い靴、硬い靴はやめる
3. 入浴
リウマチ悪化の原因としては、ストレス・過労・冷え・感染症(風邪、虫歯など)などもあり、疲れを癒す、温めるということで入浴は最適です。入浴時の注意点としては、以下の点があります。温度は38~40℃までが好ましく、入浴時間は長くとも30分以内に抑えてください。お湯の温度を低くして、室温を高くするのがコツです。入浴中は、関節の運動を行なうように心がけてください。部分浴も有効です。特に手や足の関節に痛みがあったり、こわばっているときに最適です。温水中で関節をよく動かすことが大事です。
4. リウマチの食事療法
リウマチの場合、特別な食事療法というものはありませんが、バランスよく摂取し栄養状態を改善することが大切です。また、貧血、骨粗鬆症になりやすいため、その対策を食事で行うことも大切です。以下の点に多少気をつけたほうが良いでしょう。
バランスよく栄養状態を改善する(タンパク質、ビタミン、鉄分)肉類、魚類(特に赤身の魚)、レバー、ひじき、ウナギ、貝類、大豆食品、緑黄色野菜、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ等)、海藻類 など
バランスよく栄養状態を改善する(タンパク質、ビタミン、鉄分)肉類、魚類(特に赤身の魚)、レバー、ひじき、ウナギ、貝類、大豆食品、緑黄色野菜、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ等)、海藻類 など
リウマチとインフルエンザ
インフルエンザの予防接種を受けましょう。
Q1:どうしてリウマチ患者さんはインフルエンザの予防接種を受けたほうがよいのでしょうか?
A1:リウマチ患者さんでは免疫力が低下していることより、インフルエンザにかかると重篤な病態(肺炎など)になる可能性があります。
さらに、リウマチ患者さんが内服しているボルタレンなどの消炎鎮痛剤(痛み止め)はインフルエンザ脳症・脳炎の患者には投与が禁止されています。理由は消炎鎮痛剤によりインフルエンザ脳炎・脳症を起こしやすくなり、さらに死亡率も高くなることが報告されているからです。
さらに、リウマチ患者さんが内服しているボルタレンなどの消炎鎮痛剤(痛み止め)はインフルエンザ脳症・脳炎の患者には投与が禁止されています。理由は消炎鎮痛剤によりインフルエンザ脳炎・脳症を起こしやすくなり、さらに死亡率も高くなることが報告されているからです。
Q2:インフルエンザの予防接種を受けるとリウマチが悪化することがありますか?
A2:インフルエンザの予防接種を受けてもリウマチが悪化することはありません。
カナダ、アメリカ、イタリアにおける臨床研究でインフルエンザの予防接種を受けてもリウマチが悪化しないことが証明されています。
カナダ、アメリカ、イタリアにおける臨床研究でインフルエンザの予防接種を受けてもリウマチが悪化しないことが証明されています。
Q3:プレドニゾロンなどのステロイドやリウマトレックス・ブレディニン・アザニンなどの免疫抑制剤を内服していてもインフルエンザの予防接種は効果ありますか?
A3:ステロイドや免疫抑制剤を内服していても十分インフルエンザに対する免疫力は付きます。
むしろ、このような薬を内服している患者さんの方がインフルエンザが重篤化しやすいので、是非予防接種を受けてください。
むしろ、このような薬を内服している患者さんの方がインフルエンザが重篤化しやすいので、是非予防接種を受けてください。