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診療科

前立腺癌に対するロボット支援手術


前立腺癌とは

前立腺は、精液の一部を産生する臓器であり、男性の膀胱の足側にあり、尿道を取りまくように位置します(図1)。正常ではクルミ程度の大きさ(体積で20ml以下)で、前立腺はみかんの房のような“内腺”とそれを取り囲むみかんの皮のような“外腺”で構成されます。この内腺は年齢とともに増大し、前立腺肥大症という状況になると排尿障害をきたすことがあります。 また、外腺を構成する細胞が悪性化して癌が発生することがあり、これを前立腺癌といいます(図2)。

前立腺

図1

前立腺癌

図2

厚生労働省と国立がん研究センターにより2022年5月に公表された「2019年の全国がん登録」によると、新たに前立腺癌と診断された罹患数は9万4,748人であり、男性の部位別罹患数でみると最も多い癌です。
前立腺癌の診断は、採血で調べられる腫瘍マーカーのPSA、直腸から指を挿入して触診する直腸指診、MRI検査などで前立腺癌が疑われる場合、当院では1泊2日の入院で前立腺針生検により、癌の有無、その悪性度を調べます。癌と診断された場合、進行・転移状況を調べるためにCTや骨シンチグラフィ等の検査を追加することがあります。
治療は転移の有無、悪性度、癌の広がり、PSA値により異なり、当院では転移がないものに対しては、患者様の状態に合わせて手術(前立腺全摘術)、放射線治療(密封小線源治療および外照射)、ホルモン療法等を行っております。

前立腺癌の手術

従来、前立腺摘出(全摘)手術は開腹で行われていました。開腹手術の場合、傷が大きく残る、手術後しばらく傷の痛みがある、出血が多いなど患者さんの負担が大きかったです。しかも、膀胱の奥底を手術操作しますから、執刀医や助手医師の負担も大きかったです。その後、前立腺摘出は腹腔鏡手術で行われるようになり、患者さんの負担は軽減されました。しかし、前立腺を摘出した後には膀胱の出口と尿道をつなぐ(吻合する)操作が必要で、腹腔鏡手術ではかなり難しかったのです。
その後、多関節構造の数本のアームを持つ手術を支援するロボットが開発されました。それらの手術支援ロボットを用いることで膀胱出口と尿道を吻合する操作が非常に楽になりました。現在、手術支援ロボットは、胸腔鏡手術や腹腔鏡手術に幅広く使われるようになり、前立腺癌のロボット手術も標準治療として世界でも広く行われています。
当院では、前立腺全摘除術は全例ロボット手術で実施しています。当院で使用している手術支援ロボットはdaVinci Xi(ダヴィンチ エックスアイ)というロボットです(図3)。
手術の際は腹部に6か所の1~3cmの小さい穴を作成し、そこから、トロカーと呼ばれる筒状の器具を留置します。内視鏡や手術に使う器具はこの器具から出し入れします。
手術時間は3~4時間程度で、手術の際の一般的な入院期間は10日間です。

図3

執刀医はサージョンコンソール(図3-①)を用いて遠隔でペーシェントカート(図3-②)を操作しておなかや胸の中の手術操作をします。助手をする医師や手術看護師、麻酔科医はヴィジョンカート(図3-③)に映し出される画像を見ながら執刀医のサポートをします。

ロボット支援下前立腺全摘術のメリット・デメリット

ロボット支援手術は、開腹手術と比較して術中の出血量が少なく、術後回復が早いことがメリットです。
  • 傷が小さいため術後の痛みが少なく、手術翌日から歩行が可能です。術後早期から歩行が可能となることで、肺炎や血栓症、腸閉塞などの合併症リスクが軽減できます。
  • 拡大視野での精緻な手術操作が可能であり、必要な神経や血管や筋肉の見極め、温存が可能となり、尿失禁や性機能への影響が軽減できます。開腹手術に比べて正確な切除が可能となり、癌の断端陽性率が下がることも報告されています。
  • 気腹による出血量減少が期待でき、輸血が必要なほどの出血は稀です。

一方で、患者さんに知っていただきたいデメリットもあります。
  • 頭を25°下げた姿勢で手術を行うため、原則として未治療の緑内障や重度の心臓疾患、呼吸器疾患のある方は、この手術は受けられません。
  • 過去に腹部の手術を受けている場合、ロボット手術を行えないと判断することがあります。
  • 稀ではありますが骨盤内手術の重大な合併症である大血管損傷や腸管損傷などに対しては、内視鏡操作では対応できないこともあり、開腹手術に変更する場合もあります。

低侵襲手術とは言え、ロボット支援手術の適応を誤れば重大な合併症にもつながりかねません。したがって、術前に眼圧や心肺機能の検査を専門科で行ってもらったりして耐術能(医学的に手術可能かどうか)の評価を行わせていただく場合があります。手術を受けることが可能かどうかについては主治医とよく相談して頂く必要があります。
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