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トピックス

早期の消化器がん治療で活躍する 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)



病変と周囲を薄くはぎ取る手法

消化器の壁は、表面から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)の4層に分かれています。がんは進行するにつれて、粘膜層、粘膜下層の順に広がっていきます(浸潤)。がんが粘膜下層より深く浸潤している場合、血管やリンパ管を通じて、ほかの臓器やリンパに転移している可能性が上がります。しかし、粘膜層にとどまっている段階であれば、内視鏡を使って病変部とその周囲を薄くはぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による根治が望めます。

ESDの方法は次の通りです。
  1. まず、がんの周囲に電気メスでマーキングする。
  2. がんの下の粘膜下層に液体を注入し、がんを浮かび上がらせる。
  3. マーキングに添って、がんの周囲を電気メスで切開する。
  4. がんの裏側の粘膜下層を薄くはぎ取って、内視鏡で回収する。

広い範囲を一度に切除することができるため、根治性が高い技術です。治療時間は、がんの大きさや部位によって異なりますが、おおむね1時間程度です。治療後はベッド上で安静にし、順調であれば治療翌日から流動食を開始します。入院は約1週間で、退院後はすぐに日常生活を送れます。

進行度がさらに進むと外科的な手術が必要になります。それに比べて、身体的な負担がとても軽く済みます。ESDで対応できるよう、普段の食事に気を配り、定期的な検診を心がけましょう。

早期がんの発見には医師の見つける技術が重要ですが、内視鏡機器の性能も大切な要素です。当院では2022年12月に最新鋭の内視鏡システムを導入しました。高精細な画像に加え画像強調機能も備え、みなさんの病変の早期発見に貢献できると確信しております。負担の少ない消化器がん診療に取り組んでいる当院での内視鏡検査をご希望の方は、お近くの先生にご相談ください。

年間約100例で中東遠地域最多

磐田市立総合病院のESD症例数は年間約100例で、中東遠地域では最多となります。私はESDが保険適用となった初期段階から手掛け、約15年の経験があります。当院では、消化器内科の若手専攻医でも、ベテラン医師の指導を受けながら安全確実に施行しています。病変の程度や術者の技術によって、ハサミ型ナイフ、絶縁チップがついたナイフ、針状のナイフを使い分け、病変の取り残しがないよう心がけて施術しています。

ESDなど内視鏡治療時には静脈注射による鎮静を行いますが、特に高齢者では鎮静の効きすぎによる合併症が起こる場合があります。これを避けるため、当科では鎮静の深さを術者間で共有するスコアを用い安全に内視鏡治療を行っています。また、80歳以上の場合は、呼気の二酸化炭素量と呼吸数を把握しながら施術するのも特色で、安心して治療を受けられます。

かかりつけ医の先生には、萎縮性胃炎のある患者さんには胃カメラでの検診を呼び掛けていただきたいと思います。また、胃炎のない人にも定期的な胃カメラや大腸カメラでの検診も勧めていただければと思います。病変が早い段階で見つかれば、早く治療できることを患者さんにお伝えください。

患者さんには、健康診断で便潜血を指摘されたときは、必ず大腸カメラでの検査を受けていただきたいと思います。この検査を受けた人の5%にがんが見つかる可能性があります。「自分は95%に入る、心配ない」と自分に言い聞かせないでください。より安心して暮らせるように、大腸カメラでの検査をお勧めします。

山田 貴教

第1医療副部長
兼消化器内科部長
兼教育研修室副室長

西野 眞史

消化器内視鏡室長
兼消化器内科科長
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